お護摩祈祷の起源は古代ペルシャのゾロアスター教?

薬王院の大本堂では、毎日6回、お護摩祈祷(ごまきとう)と呼ばれる「真言密教の秘法」である宗教儀式が行われています。

薬王院の中興の祖「俊源大徳(しゅんげんだいとく)」は、『当山派修験道(とうざんはしゅげんどう)の派祖(はそ)であり、「弘法大師空海」の孫弟子に当たる「理源大師聖宝(りげんだいししょうぼう)」を開山とする京都の醍醐寺(だいごじ)』で修行を積んだといわれています。

従って、薬王院のお護摩祈祷は、俊源大徳により伝えられたものと思われます。

お護摩祈祷(高尾山 薬王院)(高尾マガジンより)

今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも登場する、源頼朝の異母弟である「阿野全成(あのぜんじょう)」も、醍醐寺で20年の修行を積んだといわれていますから、俊源大徳の大先輩に当たるわけで、お護摩祈祷は大のお得意だったことでしょう。

三谷幸喜(みたにこうき)氏の脚本では、新納慎也(にいろしんや)さんが演じる阿野全成は、彼の得意技を悪用して二代目の「鎌倉殿」である源頼家(みなもとのよりいえ)を呪い殺そうとした嫌疑をかけられ、金子大地(かねこだいち)さんが演じる甥の二代目「鎌倉殿」の逆鱗(げきりん)に触れ、誅殺(ちゅうさつ)されてしまいました。

南無飯縄大権現(なむいづなだいごんげん)!

お護摩祈祷は、簡単にいえば、護摩壇(ごまだん)と呼ばれる祭壇で護摩木(ごまぎ)と呼ばれる木片を焚(た)いて、仏の智慧(ちえ)の火をもって煩悩を焼き尽くすという宗教儀式ということになると思います。

護摩木は、煩悩の象徴であり、火は仏の智慧の象徴です。

日本語の護摩は、サンスクリット語の「homa(ホーマ)」の音写語だそうで、「焼く、焚く」という意味とのことで、インドでは、バラモン教の祭祀として古くから行われているそうです。

更には、お護摩祈祷は、古代ペルシャ起源のゾロアスター教(拝火教)と深く関連しているとも言われています。

高尾山の有喜苑にある柴燈護摩壇(さいとうごまだん)は、時折行われる屋外のお護摩祈祷のための祭壇で、この場所は、春季大祭(四月の第三日曜日)、秋季大祭(10月17日)等の特別の日のイベントで使用されます。

屋外で行われる大掛かりなお護摩祈祷は、柴燈大護摩供(さいとうおおごまく)と呼ばれ、前述の「理源大師聖宝」により創始されたといわれています。

柴燈大護摩供の準備作業としては、薪(まき)を井桁(いげた)に組んで、檜(ひのき)等の可燃性の油分を含む常緑樹の葉で覆った護摩壇を築き、その周りに注連縄(しめなわ)で結界(けっかい)を定めます。

柴燈大護摩供(高尾山 薬王院 春季大祭)

私も、2017年の春季大祭のものを見学したことがありますが、壇に火が入ると、最初は、狼煙(のろし)のような真っ白な煙がもくもくと立ち上がり、やがて激しい炎へと変わりますが、これによってあらゆる病苦や煩悩が滅されるということのようです。

柴燈大護摩供(高尾山 薬王院 春季大祭)

薬王院大本堂では、最低、3000円の費用でお護摩祈祷に参加できますが、柴燈大護摩供を見学するのは無料です。

薬王院大本堂のお護摩祈祷に参加すると、前回の『新型コロナウィルス肺炎とは無関係の高尾山の「三密」』の稿でも言及された『ご本尊である飯縄大権現の「三密」(「身密」・「口密」・「意密」)』と、参加者の「身」・「口」・「意」とを一致させ、参加者の煩悩を表わす護摩木に、大導師(だいどうし)(法要全部を統括する役割の導師)が点火して、そこに生ずる智慧の浄火(じょうか)で、あらゆる煩悩を焼き清めます。

そして、参加者の清浄(せいじょう)なる祈りが火焔(かえん)に託され、ご本尊である飯縄大権現に届けられることによって、参加者の諸願が成就するというわけです。

どうやって、飯縄大権現の「三密」と参加者の「身」・「口」・「意」とを一致させるのかと問われても、何しろ「真言密教の秘法」ですから、煩悩多き凡人たる私などが到底知るところではございません。

お護摩祈祷のご利益(りやく)を少しでもお疑いの参加者の方は、念には念を入れて、事前に「三密の道」を歩いておくという「自助努力」も加えておいた方がよろしいかも知れませんね。

最低でも3000円の投資を行うわけですし・・・

薬王院大本堂でのお護摩祈祷の所要時間は一回当たり約30分です。

外国人観光客を高尾山に案内するときは、なるべく午前11時から始まる第3回目のお護摩祈祷の「前後」の時間に合わせて大本堂に到着するように調整しています。

お護摩祈祷を終えて大僧坊に戻る僧侶の列(高尾山 薬王院)

運が良ければ、法螺貝(ほらがい)を吹く山伏に先導されるお坊さんの行列が、大僧坊と薬王院大本堂との間を往来するフォトジェニックかつ、エキゾチックな場面を写真に収めることができて、ゲスト達は大喜び、大興奮ということになるからです。

薬王院大本堂のお護摩祈祷に参加の際には、木造の飯縄大権現のお前立本尊(レプリカ)を拝顔できるようですが、同じ場所にお祀りされているはずの、もう一方のご本尊の薬師如来は、どこかにお隠れ遊ばして、全くお姿はお見せにならないようです。

決して、紛失(焼失?)してしまったわけではないんですよ。

「絶対秘仏?」なんですからね!

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